日吉のショップのある住まい
 築40年の一戸建て住宅を、ショップとそのオーナー家族のための住まいに改修する計画である.

 クライアントとの出会いは2018年8月、事務所への突然の電話だった.30代前半の夫婦とその子ども家族である.中古の住宅を買って改修(リノベイション)を考えている.不動産屋をいくつか回ったがこれというコーディネートを得られず途方に暮れていたという.

 事務所を知った経緯はこうだ.
 気になっていた通りかかりの空き家が、いつの間にか買い手が付きリフォームの案内板が出ていた.それと同じ頃、上田町交差点を通る度、灯りの点く設計事務所の存在を気にかけてくれていたという.ウェブサイトを見てみると、リフォームが始まった空き家の工事状況がアップされていた、その空き家は後に坂の上スタジオと住まいとなる.

 その後、どう住まいをつくるか何度か話をした.土地を購入して新築でつくってしまおうかという話も出たが、彼らのライフスタイルを考えると借入れの負担は大きい.市内でもちらほらと良好な空き家が出てきているから、もう一度物件を探してみようということになった.後日、一緒に4つの物件を内覧することになる.
 
 住宅団地の中にある住宅2軒、川沿いの住宅、そして最後に見たのが山裾の住宅だった.住宅団地の2軒は、構造的な不具合が目視で分かったのと、もう一軒は悪くはないが良いところもなく印象に残らないという理由で却下となった.川沿いの住宅と山裾の住宅が良さそうだという皆の印象だった.その2軒の良いところ、悪いところを比較表にして彼らに提供し、彼らに判断をお願いした.

 少しして彼らから、山裾の住宅にしてみようかと思うという連絡があった.玄関ホールと階段の設えが良かったのと、何より、前居住者の手入れの丁寧さが見て伝わり、それが安心するということだった.庭もゆとりがあり樹木も豊かだったことも良かったという.築40年弱の不安もあるようだったが、屋根、外壁、内装、床下の状況を確認し、大きな不具合がないことを伝えて彼らの背中を押した.後日、彼らが購入するこの山裾の住宅が日吉の住宅である.

 忘れられない言葉がある.前に住んでいた方の思いを引き継ぐ感覚がある、というクライアントの言葉である.この言葉は改修設計の方向性を決めたと思う.改修は、新たな住み手のためにその住宅をリセットするものではない.前居住者と周辺地域の経緯を解釈し、新たな住み手の時間を重層させる行為である.このことを手に、本格的な改修設計をスタートする.(2019.3)


敷地 栃木県鹿沼市
規模・構造 店舗併用住宅
延床面積 -
総工費 -
竣工年月 2019年予定


既存の間取り、高さ、材料、構造、構法、劣化具合を実測調査し、改修設計のスタートに立つ準備をしています.('19.3.4)