荒井川沿いの本道から支流の、車をやっと一台許す細い沢道に入りそこから10分程遡上したところに唐突にある、広いのだが山全体からみたら猫の額とも言えない平地が現場である。夏場でも午後4時くらいを回ると薄暗くなるような山間ではあるが、この平地には比較的長く光が差し残る。よくこんな場所を拓いたなと来るたびに思うが、その差し残りがあれば住む場所として十分か、とも思う。この沢は櫃沢という名があると数年前の豪雨で上流から流され路肩に置いてある(捨てられている)銅製の銘板を偶然見て知り、振ってある読み仮名は「ひつざわ」とある。昔から知っている沢だが、「ひつざわ」と知ってからは「櫃沢の現場」とここを呼ぶようになって通う頻度も高じた。今日から脇本グリーンの脇本さんが櫃沢に来て、放置された10余年で野生に還り、人工物を押し包まんとする敷地内(といってもどこまでが敷地か分からない)の植物の、5日間の、造園工事のような伐採工事のような考古的発掘工事のような、工事名の判然としない作業をスタートする。