花岡のカフェ+住まい
 長く住まいと事業の場であった東京から鹿沼にUターンした依頼主は、当初、中古住宅をリノベイションしカフェを開業しようと事務所を訪れたが、検討を重ねるうちに新たに土地を求め、新築でカフェ兼住まいを計画することになった.

 敷地は駅前で、広大な田園であったが近年区画整理による宅地化が済んだエリアである.既に住宅が建ち終わり、いずれも建蔽消化率が高く建物同士が近接して建っている.メイン通り路面は駐車スペースもしくは窓の少ない閉鎖的な立面が連続するややクールな街路風景である.少し遠くに冨士山(ふじやま)の深い緑が見える.

 建物は平屋建てのカフェ棟、2階建ての住まい棟が直行して接続している.カフェ棟は道路からセットバックし、手前に駐車場を確保する.道路側に突き出た住まい棟は、前を行き交う人びとの目に留まるアイコンである.階をまたぐ垂直窓から、この建物の活動(生活の匂いのようなもの)がクールな街路風景に滲み出る.店舗へのアプロ―チはこの住まい棟の外壁を撫でるように奥へ引き入れられる.

 カフェ棟の南側に庭を残すため、カフェ棟はコンパクトな平面とし、小屋組をあらわす勾配天井とすることで気積を最大限確保し、閉塞感を和らげた.

 住まい棟は南北に細長く、それ自体が塀のような配置である.不特定多数の他者が訪れる賑わいが、隣地専用住宅のプライバシーを侵さないようにするための配慮である.

 外壁は、桜色である.モノトーン色である周辺の家いえに対し、少し柔らかな態度としての色であり、春に吹く冨士山の桜に同調している.オープン後、地域の人たちが集うカフェになる姿を見ていると、この地域の色として徐々に馴染んでいっているように見える.

敷地 栃木県鹿沼市
規模・構造 店舗(カフェ)併用住宅
延床面積 -
総工費 -
竣工年月 2020年