20250315
OPEN CAMPUS 馬頭那珂川、第2回目は「発掘編」として「造り方(構造)がどうなっているか」を部分解体を通じて見た。明治元年築と伝承する農家住宅の、解体したのは囲炉裏のある中央の室(イロリマ)の、床だ。実測編で判明したことだが、この床の下はどうやらコンクリート土間になっている、ははん、この床は時代が下ってから張られたのだ、以前は西面する台所(土間で下足利用している)とひとつづきの空間だったんじゃないか、そう立った推論を検証する「発掘編」でもあった。
作業はスクール参加者、オーナー、我々スタッフ総勢10名をして、約4帖分の床を1日かけてじっくりバラした。済むと「西面する土間の台所とひとつづきで使える土間の間」が推論そのままに現れた。宮本常一は『有賀喜左衛門著作集3』から引いて農家住宅は、①作業場として使用される部分、②日常の共同生活にあてられる部分、③各自の寝室、その3つの使用目的を持っており、その比重の如何によって土間が広くなったり、床のある間が広くなったりする、と言う(『日本人の住まい-生きる場のかたちとその変遷』)。この原則で今一度この農家住宅をみると、ある時期に家族が増えて②と③が拡張され①が逼迫した文脈が見えてくるが、イロリマの土間化が①を再拡張したことになる。①の拡張は、農を生業としかつ来訪者を気軽に招くスペースを要望する現オーナーの生き方と自然と重なる。
台所がしっくりくるスケールに拡張調整されて、これがこの住宅の当初の骨格だったんだと身体も言っている。皆を見るとたぶん同じことを考えている顔で、すっかり広くなった土間に家具をレイアウトする家具大喜利でさっそく盛り上がる。解体をもって空間を整えることができる、解体は精細な技術を必ずしも要しない原始的な作業である、解体は建築を自分たちの手に戻す手がかりとして地味だが貴いスキルなのだ。